内発的動機

内発的動機 書籍紹介

次の世代をになうこども達のキャリア形成に関心を持ったきっかけは自分自身の歩んできたキャリア( キャリアとは元々馬車が進んでできた轍 < わだち > の意味 )を振り返る経験をしたときでした。そのときにたぶん年間100冊ほど様々な本を読みました。その中で出てきたキーワードが「 内発的動機 」でした。果たして自分は内発的動機で人生を歩んできたのか、少なからず外発的な影響があったのではないか。そんな疑問を抱いたことからこども達には内発的動機を大切にしてほしいと思うようになり、そのために我々大人ができることは多くの選択肢を見せてあげて自分のわくわくを考えるきっかけを与えてあげることなのではないかと考えるようになりました。

今回は私に「 内発的動機 」を考えるきっかけを与えてくれた2冊の本を紹介させて頂きます。

  1. 「追いつめる親」(毎日新聞出版 おおたとしまさ)

教育ジャーナリストとしてご活躍されている著名な著者から2015年に出版された本書。「 あなたのため 」という親が何気なく発している言葉が実はこどもを苦しめ、それは教育虐待ではないかという問題提起だと感じました。

確かに自らのこどもの頃を思い起こしてみると、あなたのためになるんだから勉強しなさい、とか、あなたのためを思って叱っているのでしょう、などと言われた記憶があります。当時はそうなのか程度にしか考えていませんでしたが、無意識のうちに自分の人生ではなく親の人生を生きていることになってはいないかと本書を読んで考えさせられる部分がありました。また、逆に今自分が親になってこどもたちに同じような言葉を意識せずに投げかけてはいないかと自省する必要性も感じました。

あなたのため、という言葉はこどもたちのことを大切に思っているからこそ出てくるような言葉でもありますが、こどもたちを内発的に動機づける言葉としてはどうなのだろう、そのようなことを考えながら読んでいました。

( 以下、本書から引用 )

“自分の人生を自分で選ぶ機会を奪われることは、人生を奪われることに他ならない。”
“鞭のような外的動機づけに頼って成長させられた人間は、自分では自分を律することはできない。鞭が無くなると前に進めなくなる。自ら成長する力が備わっていないので、困難にぶつかるとまた自分を痛めつけてくれる指導者を求めるようになる。一方、自ら望んで試行錯誤をして成長した経験の豊かな人間は、どんな困難にぶつかっても自分の力でそれを乗り越えようとする。ブレイクスルーをもたらすために周囲ができることといえば励ましくらいだ。励ましが、目標を達成したいという本人の意思を支える。そしてあくまでも内的動機づけによってブレイクスルーがもたらされる。後者のほうが時間はかかる。しかし教育効果は大きく、かつ半永久的だ。その意味で、「 人は変えられる( 外的動機づけ )のではなく、自ら変わる( 内的動機づけ )」のだ。”

  1. 「迷子の王様-君たちに明日はない5」(新潮文庫 垣根涼介)

著書の垣根涼介さんの小説はたくさん読んでいます。この君たちに明日はないシリーズが入口でした。他に歴史小説もいくつも書かれていますがどれも現代に通じるところを感じ大変気に入っています。

本書はリストラ請負会社の面接官というそれだけで想像力を掻き立てられる職業の主人公が様々な人生の相手とともに生きることや働くことについて考えていく小説です。全5シリーズあり、テレビドラマ化もされているようです。小説ではありますが今の子育て世代が社会に出る頃の時代背景が描かれており、自分たちの人生と重なる部分もとても多いのではないでしょうか。

小説の中の登場人物が発する言葉や主人公の想いがいくつも自分と重なり、そしてどこか自分が見透かされているような感じがしました。果たして自分はこれまでの歩みをどれくらい自分自身で決めてきたのか、そのようなことを考えながら読んでいました。

( 以下、本書から引用 )

“自分で決める。人はいろいろなことを自分で決めているつもりで、意外と自分で決めていない。というより、自分の判断において、責任のある決定をしていない。会社に辞めろと言われたから辞めた。世間的にもこれがマトモな会社だと言われているから、就職する。好きだと言われたから、そんな悪い相手でもないし、付き合った。などなど、だ。
全ての判断を、その外部の要因から持ってくる。まあ、それはそれでアリなのかもしれないが、もしその判断が失敗したら、けっこう人は悔やむ。思い出すたびに納得できないものを感じる。理由は、その判断を外部要因だけから引っ張ってきているからだ。”

興味を持たれたら是非お読みいただき感想もお寄せ下さい。

次回は「 計画的偶発性理論 」について書いてみようかと思っています。

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